ボクの嫁 私の嫁 〜その6

ものすごく不定期で、誰も読まないだろうけど、続ける。


星乃さんとの思い出の続き。(今回はスキLv.1)


ある昼休みの教室でのこと。
「しまった!!」
うっかり次の授業までの宿題をするのを忘れていたのだ。
とは言っても、そこまで時間がかかる宿題でもないし、それほど「しまった」でもない。
さっさと終わらせよう…そう思ったとき、ふと星乃さんの姿が視界に入った。
星乃さんがせっせと何か書いている…よく見ると次の授業の教材を片手に持っていた。


星乃さんも宿題するのを忘れたのかな…?


そう思って声をかけた。
「やあ、星乃さんも今から宿題?」
「わっ!ビックリした〜。ううん、違うの。これは友達のなの」


……はい?


私には分からなかった。
なぜ他人の宿題をしているのか、と。
星乃さん曰く、「友達が宿題を忘れたから」とのこと。
ますます分からなかった。
まだ、分からないところを教える、とか、宿題を写させる、なら分かる。
なぜ、写させる側が写しているんだ、と疑問に思った。
そして、その友達は遊びに行ったという。
なんだよ、それ。
以前、花壇で花の水やりしているとき、「お人好しなのかな?」と思ったが、
お人好しすぎる。
確かに良いことをすると、その人のためだけでなく、自分のためにもなる。
だけど、今回の場合、自分のためになるかはともかく、
はっきり言ってその人のためにならない。
そして、星乃さんが便利屋のように扱われているのに腹が立つ。


私は怒りをこらえて言った。
「星乃さん、嫌なら嫌と言った方がいいよ」
でも星乃さんは「その友達が喜ぶから」「自分の復習になるから」と言って否定した。


どこか釈然としなかったが、私も宿題をしなくてはいけなかったので、
ノートと教材に向き合った。
ちなみに横には星乃さんがいた。
せっかくなんで、一緒にやろうという事になったからだ。


次の日。今日は朝から体育の日。
いつものように着替えを済ませ、体育館に向かうと、
体育館には星乃さんがいた。
どうやら次の時間はバレーボールのようで、その準備をしている。
そのとき、ふと気づいた。
星乃さん一人しか、バレーの準備をしていないじゃないか、と。


他の人は…?


星乃さんにそう聞くと、一人は欠席で、一人は職員室に用事があって遅れるとのこと。
じゃあ、当番以外の人は…?
そう聞かなくても分かった気がする。
一緒に手伝って、とクラスの娘に頼まなかったのだ。
黙ってたら誰も気づかない。そして、クラスメイトに頼み事を遠慮することはない。
でも、星乃さんは誰かが気づいてくれるのを待つし、
クラスメイトに直接頼みごとをするのを遠慮しちゃうのだ。


前回のことがあったから、つい星乃さんに説教じみたことを言ってしまった。
「クラスメイトに遠慮しちゃだめだよ」と。
すると星乃さんは少ししょんぼりしていた。


「自分でもそう思うの。少し積極的にならなくちゃって…」


少し、胸が痛かった。
そして、人のことを言えないな…と感じた。
自分に積極さがあるか…と聞かれたら、NOだ。
そう考えると、私も同じじゃないか。
そんな私が「積極的になれ」なんて、驕りもいいところだ。
ちょっと罪悪感を抱えてしまった。


自分が手伝うよ。


それは罪悪感からくるものだったかもしれない。
だけど、頼めば誰かやってくれる。
それを示すために私は動いたのだと思っている。


「星乃さんは積極性がなくて悩んでいる。
そんなところで私と似ている…。なんとかしてあげたいな…」
なんとかして、そんな星乃さんを助けたい…。変えてあげたい。
なんとなくだが、そうすることで私自身も変われる気がしたのだ。
その一歩として、星乃さんに
「頼めば誰かやってくれる」ことを教え、それに慣れさせるため、
私は協力した、そう思っている。


星乃さんの力になりたい。


そう考えるようにいつの間にかなっていた。


つづく。

その5 その7


だんだん星乃さんに
     引き込まれていくんですね…