ボクの嫁 私の嫁 〜その15

星乃さんとの思い出を語る日記、ナカヨシルート編。




職員室で星乃さんの転校の話を聞いた。


その日はちょうど星乃さんと図書室で偶然バッタリ会って、
少し本について話すことができた日だった。
恋愛小説が好きなんだ、とか話していたような気がする。
そして、星乃さんから「これからもっと話しかけてもいいかな?」なんて言われたから
ものすごく喜んでいた。そんな矢先のことだった。


その日の夜も、次の日も、そのまた次の日もボーっとしていた。
先生と星乃さん二人の話では残り一月足らずで転校するとのことだった。
どうして星乃さんは転校することを黙っているのだろうか。
そして、なぜ私と親しくしようとするのだろうか。
そんなことばかり考えていた。


星乃さんの様子はいつもと変わらない。
放課後、たまたま教室の様子を見てみると、
破れかけたポスターを貼り直しているのを見かけた。
また人知れず“良いこと”をしている。
話しかけてみると「こういうのは気づいた人がやればいいから」と言っている。
こんな星乃さんが人知れず転校していくなんて悲しい。
なんとかして星乃さんのことをみんなに知ってもらいたい。
星乃さんに輝日南で良い思い出を作ってあげたい。
そのためには星乃さんに積極的になってもらわないといけないだろう。
思い切って星乃さんに助言してみることにした。


「でも、この間一人で掃除していたじゃないか、僕が手伝った、あのとき」
「うん…」
「たまには人に頼むとか任せるとかしないとダメだよ」
「うん…私も、そう思っているんだけど、私、人と話すの苦手だから…」
「同級生に遠慮しちゃいけないよ」
「私ね…もっと積極的になりたい、ならなくちゃとは思うんだけど…」
「うん、そうだね」
「でも、人と目を合わせて話すことできないし、今もあなたに近づくこともできない…」
「あ…」
確かに、いつも私と話すときは伏し目がちで、今も距離が若干遠めだ。
「じゃあ、星乃さんが近づける距離まで近づいて」
「ええ…!」
星乃さんは驚きつつも、決心したような面持ちで、ゆっくりと私の方に近づいてきた。
一歩、二歩…。
だが、よく見るといつの間にか目をつむっていた。
「あのー…目をつむっていたら意味ないと思うけど」
「え!あ…!」
目を開けた瞬間、私と目があったことと
近くまで私の顔が近づいていたこととに恥ずかしがり、
星乃さんは思わずのけぞってしまった。


私は少し笑ってしまった。


2m、それが今の私と星乃さんとの距離である。




たぶん…つづく。


その14
その16


顔を真っ赤にした星乃さん
可愛いなぁ…。