プラスチックなハート その2

アマガミSS+ plus絢辻詞編 後編「ケッセン」を視聴した。


前置きとして、私は「アマガミSS」に関して、あまり良い印象は抱いてはおらず、この感想も適当に書いている。ときどきアニメと関係ない話にも飛ぶ。




絢辻詞編 後編「ケッセン」
生徒会長選挙期間真っ只中の輝日東高校。
しかし、前回、黒沢の罠にかかり、
校舎裏で黒沢と二人きりでいるところを詞に見つかった純一。
ネクタイを引っ張り純一をポンプ小屋へ連れ込む詞。
はたして生徒会長選挙の行方は!?


アマガミSS+ plus」では何を描きたいのか。
それが視聴していく中で、ずっと私の頭の中にあったもの。
ヒロインの違った一面を描くのか、時間経過による関係の変化を描くのか。
前作で見せたヒロインの可愛らしさとか、その後の恋人同士になった二人の時間とか、
私にとってはどうでもいい。
もう十分に可愛らしさは分かっている。
あえて描かずとも二人の時間なら私の中で何度も築かれている。
前作で描かれたものなど、蛇足に過ぎない。2作目の意味がない。
そんな気持ちを抱いていた。


では、詞編後編「ケッセン」を見てみる。
黒沢の罠を見抜いていた詞。罠にかかった純一を諌める詞。
純一の言葉に照れる詞。選挙期間だってのにポンプ小屋でイチャつく詞。
…コホン。
相変わらず、純一にベッタリな詞ちゃんですね。
甘えたがり、寂しがり屋…下手すると純一に依存しちゃうんじゃないかと思うほど。
詞が純一に寄り添う描写が多々見られた。


そういえば。前作では純一の気を引かせるために“演技”までしてたっけ。
さらには自分を受け入れてくれないことに対して暴力をふるったりも…。


ところで、詞はまだ「寂しい」のだろうか。
今回の生徒会長選挙では多くの支援者がいた。仲間がいた。
かつてのように自分一人で張り詰めることも、
別のお話のように自分の傍にいてくれるのは純一だけということもない。
なのに、自分が好きな人にだけ寄り添い、「寂しさ」から依存?している。
損得勘定抜きにした、表面だけの付き合いではない、同級生の付き合いは感じられない。
いつまでも(俗にいう)白モードの絢辻さんであった。
その一方で、純一にベッタリするわけで…。
純一と仲良くするシーンはあれど、他のクラスメイトと談笑するところはほとんどない。
まるで二人だけの世界にいるようだった。
そうだね。詞ちゃんは周りに純一しかいない世界にいる。
そういった意味ではアマガミSSのラストとなんら変わりはない。
ただただ、アマガミSSから続く、詞と純一の関係。
詞が純一に依存し、純一が詞の要求に応える…そんな二人の関係が描かれていた。


個人的な希望を言うならば、幸せな詞が見たかった。
この話の詞が幸せじゃないとは言わない。純一と同じ時間を過ごせて幸せそうだ。
また、幸せの定義が…とか難しいことも考えたくない。
なんだ、純一と付き合っていくうちに、価値観が変わり、
少しは同級生と打ち解けたりとか、他者との関わりのスタンスが変わったりとか、
もしくはそういった努力を見せるとか、
そういった変化があっても良かったのではないかと思うのだ。
前述した通り、詞は前作から変化はしていない。何も変わらない。
期待していた「時間経過による変化」はなかったと言える。
例をあげるならば、一人ぽっちの寂しさや打ち解けられない苦しみなど、
詞の葛藤を描いても良かったのではないか…と。
しかし、それらすべては「純一への依存」というカタチで投げ捨ててしまっている。
最終的には「二人だけの世界」に閉じこもる。
詞ちゃんにすればそれが幸せなのだろう。愛する人がそばにいればいいという、ね。
私はあまり釈然としないけど。


ところで、詞の寂しさの根源はどこからやってくるのだろうか?
アマガミSSでは仄めかす場面もあったような気がするが、SS+では皆無。
全てがそことは言わないが、理由の一つに「家族」があるだろう。
両親の考え、姉に対するコンプレックス、そして子供の頃の思い出…。
おそらく詞の人格形成に当たり、大きな影響を与えたであろうこの要素。
「家族」に対してスポットが全く当たらないのはなぜだろうか?
余談にはなるが、アマガミには「家族」の描写が多い。
詞だけでなく、薫や七咲もシナリオに関わってくる。
「家族」との関係・問題は青春時代に多くの若者がぶつかる問題だからだろう。
家族の在り方・接し方…誰もが悩み、苦しむ問題。
アマガミ」は恋愛SLGながら「家族」を描き、
ヒロインの悩みや苦しみに焦点を当て、青春を描いてきた。
美也の「あ・ま・が・み」に代表されるように、
ある意味、「アマガミ」の裏テーマとも言うべき「家族」というテーマ。
そのテーマが終始無視され、ただひたすら寂しがり屋の一面が描かれ、
すべて「純一への依存」に投げるのは…いただけない。
ゲーム内やアマガミSSで詞の家族に対する答えはなかったわけだが、
だからこそ、後日談にあたるSS+ではどんな答えが用意されるのか、微かに期待した。
が、その答えはなかった。答えはファンの中にあるということか。


世の中には縁さんが好きな方もいらっしゃるんですから、
縁さんをファンサービスで出すくらいしてもいいでしょうに。
毎回律儀にも各ヒロインたちを端役で出すくらいなんだし。ねー?


総括。
詞が純一にベッタリと寄り添う姿が描かれていた。
純一を求める詞は弱々しく、寂しがり屋で可愛らしさもあるだろう。
だが、その詞の様子は前作で散々描かれたわけだし、違う側面を見たかった。
後日談で時間経過があるのだから、何かしら変化があってもいいのに、
変化が少なかったことも少々残念に思う。
また、すべてを「純一と寄り添う」ことで解決させる話というのも
(2話しかない中で)単純という意味ではいいのかもしれないが、
あえて描く必要があった話なのかというと…疑問符。
あ、あとハナヂ王子や黒沢典子の活躍がありましたね。




余談。
紗江ちゃんの人見知り克服のために美也と七咲が頑張っていたという話。
ふと、こーいう話が描かれるのはいいな、と思ったり。
アニメなどでは主人公である純一がアレコレ試行錯誤(悪ノリ有)してたわけだけど、
結局のところ、本人がその気ならば、いくらでも変われるわけであって、
主人公が関与していようが関与していまいが、つまるところ関係ないんだな…と、
SS+を見ながら、ひとりで笑っていた私。
誰かがいて変われたなんて結果論。「橘さん」だったから、なんて関係ない。
純一はスーパーマンではなく、たまたまヒロインと出会って、たまたま関係を築いて、
その結果が上手くいったというだけ。
もし純一がその女の子と関係を築かなかったとしても、他の誰かが幸せにしている。
「橘さん」だけがそのヒロインと結ばれて幸せにできるというわけではない。
例え、付き合わずとも変わろうという意思があり、行動できれば変われる。
ちょっとは変われたかもしれない紗江ちゃんを見て、そんなことを考えていた。


とりあえず、アマガミSSの紗江編では、紗江ちゃんの特訓に協力すると言いつつ、
すべてを純一に任せっきりにした美也の無責任さが描かれたが、
美也の名誉が挽回できたんじゃないかな?(笑)


以上、戯言でした。


その1 絢辻詞編 前編「ユウワク」