いい仕事してますね

ヴィジュアルファンブックとして、
フォトカノ ビジュアルワークス」が発売された。


内容は今までの版権イラストに加え、
登場人物のプロフ紹介、表情やコスチューム等の差分イラスト、
そして、インタビューにキャラ解説と…設定資料(ラフイラスト)。
特に設定資料に関してはページの大部分を占めており、
ビジュアルワークスの『制作の裏側に迫る』という触れ込みの元となっている。
なので、フォトカノのイラストが見たいという人よりも、
フォトカノのファンで、フォトカノをもっと知りたい!というファン向けの一冊とだろう。


以上を踏まえ、読んだ感想を述べる。


・版権イラスト等
今までゲームの特典や雑誌表紙・付録などに描かれたイラストたち。
それらが一冊にまとめられたのは嬉しいところ。
特にゲーム特典のものはあまりの多さにファン一人ではカバーしきれないものだし、
その中には気に入ったものがありつつ、手に入らなかったモノもあるから。
また、遅れてファンになった者からすれば、
今まで見ることができなかったイラストをこうして手に取って見る機会もでき、
「ビジュアルファンブック」としての機能を果たしているといえる。
ちなみに新規イラストはないが、
キャラデザであるヤマザキマサハル氏のイラストが掲載されているので、
そちらも注目したい。
ラフイラスト・設定資料のページでも窺えるが、
ゲームとは少し違うヤマザキマサハル氏のイラストの雰囲気がよく表れており、
個人的に素晴らしい。


・キャラクター紹介
登場人物の立ち絵イラストに、表情やコスチュームのイラスト。
それにキャラ解説等が加わり、キャラクターのことがよく分かるページとなっている。
ちなみに下着の解説とイラストも掲載(サブキャラ含む)しており、
いかに下着のデザインにこだわっていたのか分かります。
どこにこだわってんだ!とツッコみたくなりますね(笑) いい仕事しています。
ゲーム画面ではよく分からない微小なデザインもこうして本になることで
よく分かる…というのはフォトカノのグラフィックの悪さを見ているようで…
ちょっと皮肉かな? こんなにいろいろと描きこまれているのにね。
キャラ解説では登場人物の性格やシナリオの話、デザインされた経緯・ポイントに加え、
名前の由来などが一人一人説明されている。
どんな経緯でキャラが誕生したのか、どんなコンセプトでデザインされたのか…
一度フォトカノをプレイされた方ならば、より思い入れが深まるのではないだろうか。
キャラたちとの思い出が、それらの考えとより深く結びつくことで。
そして、名前の由来は少し驚いた。
九堂「名は体を表すというだろう?」の言葉通り、
一人一人に名前に意味があり、それがシナリオやキャラの特徴を表していると知り、
より名前に愛着が持つというもの。
感動…というか、キャラ解説の話と合わせると、
グッと登場人物がカタチになって見えるような気が…する。


・設定資料
ラフイラスト。
以前、ヤマザキマサハル氏がインタビューで、
ラフイラストに関して、ゲームのイメージを損なう恐れがある…と語っていた。
もしかしたら、ゲームのキャラのイメージが崩れる可能性はある。
キャラの初期イラストの中には最終的なデザインとは全然違うものが含まれている。
また、ヤマザキマサハル氏のデザインとゲームのイラストを比べても…
微妙に雰囲気が異なるものもあるように思える。
2Dイラストと3Dイラストの差だろうか? しかし、これはこれで面白い。
イメージは異なるかもしれない。
だが、初期の方のイラストを含め、「どのようなキャラを想像して描いた」かの紆余曲折、
どのようなコンセプトを持ち続け描かれたのか、の根っこの大事な部分、
それが垣間見えるといえる。
完成されたイメージと比べることで、どの当たりを大事にしたかったのか、
どの当たりを初期から持ち続けたのか(=そのキャラにとって大事な要素)、
などなど、スタッフの考えがうかがえ知れるのではないか。
イメージは損なわれるかもしれない…が、
スタッフが思い描いたキャラ像の大事な部分がより分かりやすくはなった、
そんな印象を持つ。
設定資料集を読むたび、いろいろな発見があり、大変興味深い。
余談だが、主人公(前田一也)や主人公の両親、モブキャラのラフに、
(フォトセッションで描かれている)ポーズちゃんのラフイラストがあるのは笑ったw
あと、プリティラビィの設定もちゃんと練られていたことにも驚き。
なかなかよく作りこまれていることが分かる。


・インタビュー
今までならば攻略本に収録されているような話。
ゲーム開発に至った経緯と、ゲームシステムの話。キャラの話はキャラ解説へ。
フォトカノはこうして誕生した!という秘話が聞けます。
Dingoで初めての制作、PSPでの制作やカメラを使った新しいシステム…
いろいろなことに挑戦をし、苦労を重ね、スタッフがやりたいことを次々と盛り込んだ、
シナリオもすごいボリュームとなったゲームであると分かった。
話を聞くと、次々と案が出てきてはスタッフが尽力し、限界に挑戦した…
そんな印象を持った。
実際、ゲーム容量もギリギリだし、
モーションキャプチャーなどで断念したこともあるようで、
あれやこれやと挑戦されたのだなぁ…と、しみじみ。
杉山イチロウ氏が手掛けた、TLSキミキスから切り離され、
ある意味、イチから制作されたゲームとして、挑戦に挑戦を重ねた結果、
「挑戦」に恥じないゲームになったと思う。
3DイラストとかPSPでのゲーム、カメラを使ったゲームなど、
完全に真新しい要素というのはないかもしれない。
だが、今までのeb!系ゲームとは違ったモノを感じさせ、
それでいてバランスやデザイン、システムなど微小なとこにもこだわりを持ち、
それらがプレイヤーにも伝わるゲームだということは分かる。
そして、インタビューでよりそれらがハッキリ分かり、
改めてスタッフの仕事に感服する。


フォトカノ ビジュアルワークス」
フォトカノのイラストを閲覧することができるが、
ほとんどがラフイラストやインタビュー・解説で占められている。
まさにファンに向けた「スタッフの仕事」が垣間見える一冊となっているだろう。
スタッフのこだわりをラフイラスト等から想像することができ、
スタッフがどこに力を入れたのか、どんな考えを持って制作にあたっていたのか、
その一部を窺い知ることで、よりフォトカノの世界に入ることができる。
より深くフォトカノの世界に浸りたいというファン向けの一冊。
大変素晴らしい一冊だった。
ボリュームたっぷりで、ファンの方におススメしたい一冊。


最後に…このフォトカノスタッフが作る「2作目」が非常に気になるところ。
どのような作品になるのか、どんなことに挑戦するのか、大変楽しみである。
一ファンとして、また良い仕事を期待する。