清く恋しく美しく

セイレン 第四話「ホシゾラ」視聴しました。以下、感想文。


常木耀編最終話にあたる第4話。ひとまず一区切りとなる話。


耀のバイトをバラしたのは耀の友人であり、
耀が正一を避けていたのは正一をそれ以上疑いたくなかったから。
耀の機嫌を損ねたのは友人関係の拗れからだったというわけで。
耀の友人の由貴恵が耀を罠にハメたのは荒木先輩と付き合うためという、
恋愛関係のイザコザから。
友人関係や恋愛感情に敏感な思春期にはよくある話ではなかろうか。
第3話では明かされなかった展開が第4話で種を明かされ、
耀編の終わりへとつながった。


各々のヒロインたちとの物語にテーマを設けるならば、
耀編は「将来やりたいことが見つからない二人」の物語だった。


主人公正一は物語冒頭から語られている通り、
将来についてやりたいことが見つからないことが悩みであった。
耀編4話を通じて、常木耀も正一と同様の悩みを持つことが分かった。
やりたいことがなかった(だから、恋愛をしてみようと思ったのだろうか?)、
しかし、合宿や正一との出会いを通じて、料理人というやりたいことを見つけた。
正一も耀の進む道を見て、自分が進む方向が決まった。
料理人の耀をサポートするためであろうか、管理栄養士という道。
給食センターに内定したということは、
第一話を鑑みるに、正一にしてみたら子供たちのためにもなる職業だろう。
「将来について考える」という点を見てみると、
見事に物語が1本の筋を通って完結していることがわかる。
思春期の少年少女の悩みらしいテーマであり、
ごく当たり前の高校生の恋愛を描いた、ごく普通の物語である。
最初から最後まで何も変わらない。
実に爽やかな「セイレン」な物語だっただろう。スッキリしている。


あの海で二人が付き合わなかったとしても、私は構わない。
なぜならあの物語で大事だったのは二人の進路であったから。
将来が分からない二人が出会って、お互いを知ることで将来を決めた。
だから、二人が付き合うことでその将来が閉ざされてしまうのは本末転倒。
5年後に再会して、再び時が動き出す終わり方もいいではないかと私は思う。
それに、二人が5年前と変わらない容姿なのもポイントかもしれない。
二人が5年前と変わらないという表れなのかも、と。
過去作には「離れてしまえば終わり」とぶっちゃけた作品もあったが。
再会した後はファンの手で考えるのも実に楽しいよね。


恋愛SLGにおいては必ずヒロインと結ばれなくてはいけない。
そうしなければゲームとして終わりを迎えた実感がないため、
必ずヒロインと結ばれる終わり方をしなくてはいけない縛りがある。
もちろん、全部が全部そうとは言わないが、アマガミキミキスではそうだった。
アニメのセイレンはそんな縛りがない。
だからこそ、5年後再会EDができたのかな?と思う。
どうせ二人はくっつくんだろ?あとは脳内で補完してやるよ!
と個人的には思っているので、私はこのEDに関しては好意的にとらえている。


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ところでの話。ここから先は話をガラリと変える。


耀編において、一つ気になるところがある。
それは「選択肢」である。


主人公である正一が勉強合宿に参加しなければ、
耀編のルートにならないと明言されている。
主人公の選択一つで物語が大きく変わるように感じる一方で、
主人公以外の選択もどこかにあるように思えるのだ。


それは耀の選択。
私は前回まで耀の思考をイマイチとらえきれないと感想を述べていた。
それもそうだろう。
正一がゲームプレイヤーとしてルートを選んでいるならば、
おそらく耀も2Pプレイヤーとして行動していたのではないかと思うからだ。


耀は正一が知らないところで色々な行動をしていた。
密告の犯人捜し、そして将来についての選択。
あらゆる場面で正一が知らないところで耀の物語が進んでおり、
その耀が選んだ行動の答えを見せられていた。
また、合宿始まってからも耀の提案や言動に振り回されて、
正一が選んだと思われる選択肢はほとんど見えてこない。
ゲームとして考えると、行動権利が1Pから2Pのヒロインに譲渡されていたのだ。
唯一、海での告白だけは正一の選択肢らしい部分だったが、
耀にシャットアウトされた。耀の選択肢によって。


セイレンという物語はほとんど正一目線でしか話が展開されないため、
耀が何を考えて何を思っていたのかはほとんど明言されない。
正一は耀に流されるままに物語は進み、非常に起伏が少ない話となっている。
本来、これは常木耀目線で進んでいる話だから。
これは2P側で展開されている話を、1P側で見ている作品だから。
肝心の1Pは2Pを攻略するようにはまったく動かない。
だから2Pの耀は自分勝手で我がままに見えるし、正一を振り回す。
正一も主体性のない受け身的なキャラになっている。
もし、耀目線で話が展開されたならば、もっと違ったのかもしれない。
それこそ、ゲームでヒロイン目線のルートがあれば、
そういうことだったのか!と膝を叩く展開が多かったのかもしれない。


夜の海で正一が放った言葉がある。
「その時、初めて彼女の心の声が聞こえた気がした」


それは2Pキャラが初めて1Pキャラと心を通わせた表れではないかと思っている。
今まで別々に行動してきた二人のプレイヤーがいた。
ヒロインの2Pキャラは不明だが、
1Pキャラは相手の心情や気持ちを読み取ることができなかった。
だが、最後の最後でようやく心を交わせることができた。そんな表れだ。
ゲームで言うならば、1Pを攻略するために2Pが動き回り、
最後の場面で2Pは自分の選択と気持ちを伝えた。
そして、EDで1Pは2Pの気持ちが初めて伝わったのである。


ここまで書いてみて、実は耀編は耀が攻略側だったのかな?なんて思う。
攻略するヒロイン…といったところか。


もしこれがゲームならば、面白い試みだったかもしれない。
むしろ、ゲームとしてはシステム的に不可能だろうが(笑)
なんだよ、2Pが1Pを攻略する恋愛SLGって…。


なお、これらは私の勝手な妄想であることをご了承願う。


そういえば、正一が合宿ルートで選択肢らしいことっていえば、
耀を合宿にとどまるように説得したり、ジャージ受け取り拒否したり、
そういうのも含まれる、か。
そして、それらがなければ耀の由貴恵の疑惑は晴れなかったわけで…。
一応、1Pとしての行動はちゃんとしていたのだろうか?
その正一の選択が耀ルートのEDへとちゃんと導いているところを鑑みると…。
さて。


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耀編が終わったところで、後々の話につながるアレコレが残された。
第4話冒頭の郁夫のご機嫌な様子、他のヒロインたちの言動、等々…。
これらが他の話ではどのような繋がりを見せていくのか楽しみにしたい。